〜言の葉の部屋〜

半神の願い scene-13



「教皇の命もあり、黄金聖闘士の方々には教皇の間まで起こし頂きたいのですが・・・」
 紫龍達に簡単な説明を終えたアイオリアはエルシドとマニゴルドに戻した視線をどうしたものかと彷徨わせる。
 困った事に連れて来いと言われているのは先の黄金聖闘士だけであり、星矢たちにはまだ十二宮には近付いて欲しくは無いのだ。
 何せ現状を把握する事も出来ていなければ、先の黄金聖闘士達と何の打ち合わせも済んではいない。
「アスミタ以外は後ろから付いてきている」
 エルシドが確認してみると童虎と共に近付いてくる複数の小宇宙が感じられた。
「ってかよ、アスミタの小宇宙が弱ってんのは気のせいか?」
 マニゴルドの言葉に青銅兄弟も確認してみるが、アスミタだけではなくシャカの小宇宙も弱っている様子である。
「さすが、兄さんだね」
「聖衣を纏えばもう少し早かっただろうがな」
「終わったならばさっさと来れば良いものを・・・」
 何をしているのかまでは解らないが、一輝とシャカ、そしてアスミタの小宇宙はその場から動く気配は無かった。
「・・・アイオリア」
「何だ?星矢」
 名を呼ばれ、アイオリアが星矢に顔を向けると星矢はなんとも不安そうな表情をしている。
「その・・・魔鈴さん怒ってるかな?」
 そんな事かと、アイオリアは思わず笑みが零れてしまった。
「いや、心配はしていたが怒ってはいなかったと思うぞ」
「そ、そっか!」
「まぁ・・・目を覚ましたら鍛えなおしだ、とは言っていたがな」
「アイオリア・・・それって怒ってるって事じゃんかよ・・・」
 魔鈴の扱きは童虎の上を行く。
 たった3歳しか離れていないと言うのに、自分と出会った時には既に白銀聖闘士だった実力の持ち主。
 童虎との修行で死を実感した覚えはないが、魔鈴との修行を思い返せばいつも隣でタナトスが手招きをしていた気がしてならない。
 そんな記憶を思い返していると、星矢の心を一つの感情が占めた。
    此処から逃げ出したい。
 折角、冥王との戦いから生還したと言うのに、このままでは冥界に逆戻りさせられるかも知れないと言う危機感が星矢を襲っていた。
「星矢?」
 急に萎んでゆく星矢の様子に瞬がその顔を覗き込むとガシッと両肩を掴まれる。
「瞬、今すぐ日本に戻ろう!」
「何を言っている」
「日本に居ては厄介なヤツ等が来る可能性があると老師も言っていただろう」
 紫龍と氷河が星矢を諭そうとするが、星矢は首を左右に振って思い切り拒否した。
「厄介なヤツ等?魔鈴さんに扱かれる事に比べたら海将軍や三巨頭やポセイドンやハーデスの相手をした方がマシだ!」
 きっぱりと言い切る星矢の必死な姿から、その場の誰もが神との戦い以上の恐怖を植えつけた魔鈴に恐れを感じてしまった。
『おいおい、ハーデスの方がマシってどんなヤツなんだよ』
『名前から察するに女性の様だが・・・』
 想像しようにも仮面をつけた女闘士姿のハーデスが出てきてしまい、エルシドとマニゴルドは必死にそれを打ち消した。
「へぇ・・・星矢。そんなに私が嫌いかい?」
「嫌いなんじゃなくて・・・って」
 そこへ不機嫌さを顕にした星矢に馴染み深い綺麗な声が降ってきた。




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